中耳炎の感染ルート

慢性化膿性中耳炎も滲出性中耳炎も、急性中耳炎をきっかけとして病気が始まります。また中耳真珠腫は慢性化膿性中耳炎や滲出性中耳炎を起こしやすくする原因が長期にわたって続くと起こってくる可能性があります。本来、無菌状態である中耳の鼓膜が急性炎症を起こす原因は、次の3つの経路のいずれかから細菌やウイルスが入り込んだためです。
1.上咽頭にある耳管の入り口から感染する経路。
2.鼓膜にあいた孔から感染する経路。
3.全身の血液を通して感染する経路。

このうちもっとも一般的なのが1.の耳管の入り口から感染をおこす場合で、子供が風邪をひいた時などに起こす急性中耳炎のほとんどがこれに当てはまります。
耳管経由の急性中耳炎のタイプは正確に言うと2通りあります。まず一つ目が、風邪などで上気道に炎症を起こしている際に鼻をかんだり、あくびをしたり、嘔吐や咳に伴って耳管の入り口が開き、細菌やウイルスが鼓室に飛び込んで感染する場合です。
もう一つが、急性鼻咽頭炎の粘膜病変(鼓膜が炎症を起こした状態)が連続して耳管炎を起こし、これが鼓室粘膜にまで及んで中耳炎となる場合です。喉も耳管も同じ粘膜組織でできているため、それが波及してしまうのです。

2.の鼓膜に孔があいた状態というのは「慢性化膿性中耳炎」のことを指します。慢性化膿性中耳炎の人は耳管からだけではなく、鼓膜の孔からも感染を起こす可能性があるのです。

3.の血行感染は、まれな例であまり多くみられません。インフルエンザや麻疹、溶連菌感染症、ジフテリア、結核などの感染性疾患に伴って起こります。
急性中耳炎の原因となるのは細菌です。しかし、発症初期の人の中耳貯留液から細菌が見つからず、インフルエンザウイルスなどのウイルスが見つかることがあります。そのため、まずウイルス感染が起こり、それによって中耳の粘膜の働きが弱まったところで細菌感染を起こすと考えられています。
細菌の中でも、肺炎球菌、インフルエンザ菌(ウイルスではありません)、モラクセラ・カタラーリスが急性中耳炎の三大起炎菌といわれています。最近では、ペニシリンなどの抗生物質に耐性を持った肺炎球菌など、薬剤耐性菌が出現するようになり注意が必要になっています。