真珠腫性中耳炎とはどのようなもので、どうしてできるのですか

真珠腫は慢性中耳炎のひとつの形で、古くから知られていますが、なにが原因でこのような状態になるのか、いまだに議論が絶えません。
真珠腫とは、鼓膜の表面の上皮細胞が増殖して塊になったものです。外耳道や鼓膜は、皮膚から続く上皮細胞という細胞の層でおおわれています。一方、中耳の鼓室内は鼻から続く粘膜層でおおわれています。ですから、普通鼓室内を含めた中耳腔は粘膜でおおわれており、上皮細胞は存在しません。
上皮細胞は、体の表面をおおう大切なものなのですが、本来とは違った場所にあるとやっかいな性質を持ってしまいます。上皮細胞が体の表面でないところ、つまり空気に触れない場所にあると勝手にどんどん増殖するという性質があるのです。その上皮細胞がなんらかの原因で鼓膜の近くや上鼓室などに入って空気に触れなくなるとそこで増殖して、塊を作りながら中耳内に入っていきます。
上皮細胞がいったん塊になると、さらにやっかいな性質が加わります。その塊が骨を溶かす酵素を分泌し始めるのです。つまり、中耳やその周りの骨を溶かしながら、更に増殖を続けることになります。
真珠腫が他の中耳炎と違う点は、骨を溶かす力が強い点と、再発を起こしやすい点です。
真珠腫はふつう、鼓膜の近くで生じますからそのあたりの骨がまず溶かされます。鼓膜の縁を形作っている骨や耳小骨です。耳小骨が溶かされて、鼓膜から内耳に音を伝えることができなくなると、中等度以上の難聴になります。さらに奥に進むと内耳の一部である三半規管に及び、強いめまいを起こすこともあります。大脳を覆う硬膜にまでいたることもあります。
もう一つの特徴は、手術でいったん取り除いても再発しやすい点です。上皮細胞の塊がほんのわずか残っていても、そこから再発が起こるといわれています。