滲出性中耳炎とは

滲出性中耳炎とは、耳管が正常に働かず、鼓室(中耳)に液体がたまっている状態をいいます。鼓室に液体がたまるところまでいかなくても、耳管の働きが悪いためにいろいろな症状がある場合は滲出性中耳炎と呼ぶことがあります。
急性中耳炎でも鼓室に膿汁がたまることがあります。では、急性中耳炎と滲出性中耳炎とはどのように区別するのでしょうか。
この二つは急性炎症の症状があるかどうかで区別します。つまり、急性中耳炎では耳痛、発熱、鼓膜の発赤、腫張などの急性炎症の症状が見られますが、滲出性中耳炎では鼓室に液体がたまっていても急性炎症の症状はないものと定義されています。
それでは、滲出性中耳炎でなぜ鼓室に液体がたまるのでしょうか。
鼓室の空気は鼓室粘膜を通してまわりの血液中に常に吸収されています。耳管が閉じてしまうと、外から空気が入ってこない状態で鼓室内の空気がまわりの粘膜に吸収されるため、鼓室の空気は薄くなってきます。すなわち、鼓室の気圧が低下します。すると鼓膜の外側(外耳道)と内側(鼓室)で気圧の差が生じ、鼓膜はより気圧の高い方から押されるようになります。このとき、外耳側から鼓膜を見ると鼓膜は内側にへこんだ状態(内陥)に見えます。
さらに鼓室の気圧の低下が進むと、今度は鼓膜が内陥するだけにとどまらず、まわりの粘膜の水分が鼓室内ににじみでてきます。この状態が滲出性中耳炎なのです。
つまり、滲出性中耳炎は、耳管の働きが悪くなって鼓室内が陰圧になり、その状態が続くことによって鼓室内に滲出液がたまった状態、といえます。
いったん鼓室内に滲出液がたまってしまうと、さらに困った状態が起こります。もともと鼓室は空気で満たされているべきところです。そこにいつも液体がたまっていると、鼓室の粘膜がその水分によってふやけた状態、つまり厚くなってしまうのです。さらに耳管の表面の線毛機能も弱まるため、鼓室から液体が出にくくなり、そのことによって鼓室はいっそう液体がたまりやすくなります。
鼓膜が内側にへこんでいる状態では、鼓膜は常に外からの圧力を受け、張り詰めた状態になっています。そのため、音に対して弱い反応(振動)しかできず、聴力は低下します。滲出液が鼓室にたまると、その動きはさらに制限され、難聴がさらに進みます。