鼻咽腔は鼻腔と咽頭をつなぐ部位で、鼻の奥にあり、上咽頭とも呼ばれます。耳管はここに開口していて、滲出性中耳炎の発症に重要なところです。鼻咽腔は鼻腔とつながった空間なので、色々な鼻の病気が耳管の働きを低下させる原因となります。もちろん、鼻咽腔そのものの病気でも耳管の働きは低下します。
■鼻咽腔の病気
鼻咽腔の病気の代表的なものがアデノイドです。アデノイドは咽頭扁桃という、鼻咽腔にある扁桃組織の一つが腫れて大きくなったものです。アデノイドは成長期の5~6歳頃にもっとも大きくなり、その後は徐々に小さくなっていきますが、その程度には大きな個人差があります。
アデノイドが大きくなると、耳管の開口部の周りを圧迫し、耳管の働きが低下する原因となります。しかし、アデノイドの大きさよりも、アデノイドに細菌性の炎症があるかどうかのほうが滲出性中耳炎の発症により深く関わっているという説もあります。
アデノイドが大きいと鼻閉(鼻づまり)の原因ともなるため、副鼻腔炎(蓄膿)を治りにくくし、結局は耳管の働きを悪化させます。
子供ではアデノイドが耳管の働きに影響する代表的な病気ですが、大人では鼻咽腔に癌ができ、滲出性中耳炎の原因となることがあります。50~60歳代の成人で、滲出性中耳炎から、ごくまれにこの部の癌が発見されることもあります。
■鼻の病気
鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)、副鼻腔炎がその代表的なものです。どちらも鼻の粘膜の腫れを招き、そのため耳管の開口部が狭くなってしまいます。鼻アレルギーと副鼻腔炎は、小さな子供の滲出性中耳炎の要因になるばかりでなく、急性中耳炎の原因ともなるものです。滲出性中耳炎の外来治療では、主体をなすものといっても過言ではありません。