一般的な急性中耳炎の原因

●耳管を通った感染
急性中耳炎のほとんどは、耳管からの細菌感染によって起こります。耳管は鼓室と鼻咽腔とをつなぐ管です。つまり鼓室は耳管を通して喉の奥とつながっていると言えます。
鼻咽腔にはアデノイドがあり、アデノイドに炎症があると中耳に細菌感染を起こしやすくなります。鼻咽腔は鼻腔とも連続してつながっているので、鼻の中に細菌性の炎症があったり副鼻腔炎(蓄膿)があると、中耳炎を起こす原因となります。つまり、急性中耳炎の大半は、鼻の中の細菌を含んだ膿汁が耳管を通って鼓室に侵入して起こるのです。鼻を強くかんだだけでも、その圧力で細菌が耳管を通って中耳に及び、中耳炎を起こすことがあります。鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)では、鼻の粘膜の腫れが強く出る場合や、副鼻腔炎などの細菌性の炎症を併発する場合が多いので、これも急性中耳炎の原因の一つになりえます。

●外耳道を通った感染
耳の穴から細菌が侵入して中耳炎を起こすことはあまりありません。外耳道は皮膚で覆われており、その皮膚の表面は上皮細胞という細胞の層で覆われています。その上皮細胞層は鼓膜表面にもつらなっていて、耳への病原菌の侵入をしっかり防いでいます。
しかし、耳掃除などで外耳の皮膚が傷つき、そこに細菌感染が起こると外耳炎になり、それが鼓膜の表面にまで達して中耳炎をひき起こすことがあります。もちろん、ケガなどで鼓膜に穴があいた場合には、そこから中耳に細菌が侵入して中耳炎となることがあります。
ただし鼓膜に小さな穴があいていても、水が簡単に中耳に侵入するということはありません。上皮は薄い脂肪(油分)で覆われているため水をはじきますし、水には表面張力があるので、水分は小さな穴からは中耳に侵入しにくいのです。むしろ、鼓膜に穴があいていると耳管から中耳への逆流が起こりやすくなり、これが中耳炎の原因になります。ただ、鼓膜に大きな穴があいたままになっていると、当然そこからの細菌感染が起こりやすくなり、急性中耳炎になりやすいのはたしかです。また、長年鼓膜に穴があいたままの状態は慢性中耳炎ということになります。

●血液を介した感染、その他
耳以外のところに細菌感染があると、感染巣の細菌が血液の流れに乗って中耳に達し、そこで繁殖して中耳炎を起こすことがあります。これは理論的にはありえますが、実際に起こることはまれです。