耳鼻咽喉科でよく使う「自覚症状」について

耳鼻咽喉科で診療を受ける際に医師がよく使う言葉「耳閉感」や「耳鳴り」などはあまり使った経験がないため、どういったものが「耳閉感」でどのようなものが「耳鳴り」なのかがわからず、医師に症状を話す際に混乱してしまう人がいます。医師とのコミュニケーションをスムーズにするため、耳鼻咽喉科で耳を診てもらう際によく使う言葉について、正確な意味を掲載します。


【耳痛】
外耳炎などで外耳が痛い場合は、耳介などのいわゆる「耳」(一般の人が普段「耳」と読んでいる部分。外から見える耳)を押したり引いたりすると、痛みが増します。急性中耳炎で膿が鼓膜を押している時や、真珠腫性中耳炎でデブリ(角化物)が充満した時などにも痛みを感じますが、これらの場合では「耳」を押したり引いたりしても痛みは変わりません。咽頭や扁桃の病気でも、耳が痛い(放散痛)と感じる時があります。

【耳閉感(耳閉塞感)】
耳が塞がれているようで不快な状態です。プールで耳に水が入ったり、飛行機の離着陸時、高層ビルのエレベーターの上昇・下降時、また自動車で山を登ったり下ったりする際に感じる耳が詰まった感覚が耳閉感です。外耳疾患では外耳炎の炎症がひどこうなったり、耳垢がつまったり、異物が外耳道に入った場合に起こります。中耳疾患では、耳管機能不全による「耳管狭窄症」や「耳管解放症」によってしばしば起こります。また、内耳疾患でも耳閉感を感じることがあります。

【難聴】
文字通り、音が聞こえにくくなっている状態を難聴といい、しばしば耳閉感と混同されます。一口に難聴といっても、音が少々聞こえにくい「軽度の難聴」から、大声で近くから話しかけられてもなかなかわからない「高度の難聴」まで程度はさまざまです。外耳道から鼓膜~耳小骨までの外耳・中耳の機能が衰えて生じた難聴を「伝音性難聴」、内耳の有毛細胞や蝸牛神経などに障害を受けた難聴を「感音性難聴」と表現し、両方同時にダメージを受けて発症した難聴を「混合性難聴」といいます。

【耳鳴、耳鳴り】
本来何も音がしていないはずなのに、患者にだけ聞こえる聴覚の異常感覚で非振動性耳鳴または自覚的耳鳴(真性耳鳴)と呼ばれています。自覚的耳鳴の原因は、蝸牛有毛細胞から聴神経を経由して大脳皮質にいたるまでの聴覚神経のどこかにあると考えられます。つまり蝸牛有毛細胞や聴神経などに異常が生じ、それによって生じた興奮性の情報が聴覚径路を通って中枢に伝えられると「耳鳴」として自覚されるわけです。
蝸牛においては、耳毒性薬物の投与や強大音を聞いたことによる音響外傷によって有毛細胞代謝が障害されたり、機械的に損傷を受けたりして耳鳴が生じます。聴神経においては、聴神経腫瘍をはじめとした脳腫瘍や脳動脈瘤の圧迫によって聴神経自体が障害を受けて耳鳴が生じます。
中耳内または中耳周辺の筋肉の収縮音や血管雑音が原因で生じる耳鳴は、振動性耳鳴と呼ばれています。振動性耳鳴は本人だけでなく検査している人にも音が聞こえることがあるため他覚的耳鳴とも呼ばれています。
耳鳴りの音は「キーン」といった高音の耳鳴から、「ゴーッ」といった低音の耳鳴まで様々です。

【耳だれ、耳漏】
「耳だれ」とは外耳道から出てくる分泌物のことです。量が多くなると外耳道に留まらず耳の外まで出てきます。耳だれには、外耳道由来と中耳由来があります。外字道由来の耳だれは、透明の液体状または膿性で、かゆみや痛みを伴います。中耳からのものは、中耳が粘膜で覆われているため、ねばねばとした粘液性や粘液膿性になります。骨破壊を伴うようなときに出てくる耳だれは、悪臭が強くなります。